小規模共済は危険？

「小規模企業共済制度」が正式名称で、小規模企業の経営者や役員の方が、廃業や退職時の生活資金を積み立てることができます。

掛金が全額所得控除できる税制メリットに加え、事業資金の借入れもできる、おトクで安心な小規模企業の経営者のための「退職金制度」です。

～参考～小規模企業共済の公式ページはこちら

小規模企業共済とは？

1965年に創設されて以来、小規模企業共済は全国の経営者や役員、個人事業主から利用されてきました。小規模企業共済制度の（令和4年3月末現在）在籍人数は約159万人、資産運用残高は約10兆8,847億円です。令和3年度の受給状況は、共済金受給額が約5,077億円、共済金受給額の平均は1,128万円、共済金受給者の平均在籍年数は約19年となっているようです。

～参照～小規模企業共済の公式ページより

小規模企業共済の加入資格

○小規模企業共済の加入資格
①　常時使用する従業員数が20人以下の個人事業主、または会社等の役員（建設業、製造業、運輸業、宿泊業、娯楽業、不動産業、農業などを営む場合）
②　常時使用する従業員数が5人以下の個人事業主、または会社等の役員（卸売業、小売業、宿泊や娯楽以外のサービス業を営む場合）
③　事業に従事する組合員が20人以下の企業組合の役員
④　常時使用する従業員数が20人以下の協業組合の役員
⑤　常時使用する従業員数が20人以下の農事組合法人の役員（農業の経営を主として行っている場合のみ）
⑥　常時使用する従業員数が5人以下の士業法人の社員
⑦　上記①または②に該当する個人事業主の共同経営者（2人まで）

（※上記のいずれかに該当すれば加入可能）

医療法人やNPO法人など、加入対象外の業種や法人も存在するため、詳しくは公式サイトで確認しておきましょう。

なお、組織・従業員が大きくなると加入制限がかかりますが、創業間もない、小規模から加入していれば、たとえ成長し大法人になっても加入継続ができます。

～参考～小規模企業共済の公式ページはこちら

小規模企業共済に加入する6つのメリット

退職金を色々な方法で受け取れる

小規模企業共済で積み立てた掛金は、廃業以外にもさまざまなタイミングで受け取れます。

上記の通り、小規模企業共済では退職や廃業以外にも、病気やケガ、任意解約などをきっかけに退職金を受け取れます。

246ヵ月以上の積み立てで任意解約の返戻率が100％超え

上の表を見ると分かるように、掛金を246ヵ月以上支払えば、仮に任意解約をしても返戻率が100％を超えます。また、最大では掛金の120％の退職金が給付されるため、長期的に運用すれば大きなメリットを実感できる仕組みのようです。

～参照～小規模企業共済の公式ページより

掛金全額が所得控除の対象

小規模企業共済で支払った掛金は、その全額が所得控除の対象になります。法人の場合も経費として処理できるため、高い節税効果を得ながら退職金を積み立てられます。

なお、個人型確定拠出年金の「iDeCo（イデコ）」も特徴が似ている制度ですが、iDeCoは原則として途中解約が認められないため、退職金ではなく老後資金の積み立てとして活用されてます。

掛金を自由に設定

小規模企業共済の掛金は、毎月1,000円～7万円の範囲内で自由に設定できます。増額・減額は500円単位であり、もちろん加入後の金額変更も可能です。

さらに、一時的に支払えなくなった場合は掛け止め（※）もできるため、どのような方でも無理のない範囲で積み立てられる仕組みになっています。

（※）解約をしない状態で、一時的に掛金支払いを停止すること。

受け取り方法によっては退職所得控除が適用

○退職所得扱いになる受け取り方
・共済金または準共済金を一括で受け取る
・共済金を一括と分割併用で受け取る（※一括分のみ退職所得扱い）
・65歳以上になってから任意解約する
・65歳以上になってから共同経営者が任意退任する
・法人成りに伴って解約手当金を受け取る

上記のケースでは、通常の退職金と同じく「退職所得控除」が適用されるため、さらに大きな節税効果が望めます。

貸付制度を利用できる

上記はいずれも低金利なので、災害などの緊急時には心強い存在になります。即日貸付けにも対応しているため、ケースによっては貴重な資金調達手段になることでしょう。

～参照～小規模企業共済の公式ページより　

小規模企業共済のデメリットは？

支払い月数が6ヵ月未満の場合は掛け捨てになってしまう

小規模企業共済では、掛金の支払い月数が6ヵ月を超えない限り共済金A・共済金Bを受け取ることができません。仮に3ヵ月以内に解約した場合は、退職や廃業などの条件を満たしても全額が掛け捨てになってしまいます。

元本割れのリスクがある

小規模企業共済では、掛金の支払い月数が240ヵ月を超えないと元本割れを起こします。つまり、少なくとも20年は積み立てる必要があるので、あくまでも無理のない範囲で掛金を設定することが大切です。

受取時に課税される

小規模企業共済で受け取る共済金や解約手当金には、通常の所得と同じ税金がかかります。受け取り方法によっては退職所得控除が適用されるものの、控除分を超えた金額は所得税または住民税の対象になります。

また、以下の受け取り方法を選んだ場合は、退職所得控除も適用されず、注意が必要です。

○退職所得控除が適用されない受け取り方法
・共済金を分割で受け取る（雑所得扱い）
・65歳未満のタイミングで任意解約する（一時所得扱い）
・65歳未満の共同経営者が任意退任する（一時所得扱い）
・機構解約によって解約手当金を受け取る（一時所得扱い）
・遺族が共済金を受け取る（みなし相続財産）

積み立て時の掛金は全額が所得控除の対象になると先に述べましたが、もし上記の方法で共済金などを受け取ると、実質的には単に課税を先送りにしている状態になります。つまり、iDeCo（※）のような節税メリットは発生しないため、受け取り方法や解約のタイミングは慎重に判断しましょう。

（※）iDeCoでは、受給時に退職所得控除または公的年金等控除が適用される。

小規模企業共済に加入する4ステップ

【1】必要書類を準備する

まずは、窓口に提出するための必要書類を準備します。申込人によって必要書類が異なるので、一つずつ確認しながら準備を進めましょう。

契約申込書と預金口座振替依頼書については、中小機構の資料請求ページまたはコールセンターから請求します。なお、コールセンターは平日のみの対応であり、特に休み明けは電話が込み合うこともあるので、お急ぎの方はWeb上の資料請求ページから請求しましょう。

【2】様式書類に必要事項を記入

中小機構から書類が届いたら、契約申込書と預金口座振替依頼書に必要事項を記入します。いずれの書類にも細かく案内が書かれていますが、もし記入に迷った場合は公式サイトで公開されている記入例を参照してみてください。

～参照～小規模企業共済の公式ページより　

なお、共同経営者として加入する場合は、個人事業主の署名と捺印が必要になります。

【3】窓口で申し込み

小規模企業共済では郵送による手続きを受け付けていないため、以下のいずれかの窓口に出向く必要があります。

民間銀行でも手続きは可能ですが、インターネット専業銀行や外資系銀行のように窓口がない銀行もあります。足を運ぶ前に窓口の有無を調べておきましょう。

【4】書類を受け取って完了

窓口の案内に従って手続きを進めると、中小機構による審査が実施されます。審査で特に問題が見当たらない場合は、申し込みから約40日後に『小規模企業共済手帳』と『小規模企業共済制度加入者のしおり及び約款』が届きます。

この2つの書類が届いたら、小規模企業共済への加入は完了です。なお、審査に落ちた場合は約2ヵ月後に通知が届き、申し込み時に支払った現金は指定の口座に返還されます。

まとめ

今回小規模共済の手続きを、知人の個人事業主と共に進めてきました（書類は現在提出済みで審査待ち）

年間で最大８４万円の所得控除は大きな魅力です。それに加え、低金利での借入も可能であり、即日対応もあるので急な出費にも備えられます。手続き自体も簡単で用意する書類も多くありません。

元本割れのリスクはありますが、加入人数・在籍人数が高い水準を保っており、共済金や解約手当金がまったく出ないほどの事態になるリスクはほぼないと言えます。

気になったのは、申し込みが窓口対応のみということでしょうか

オンラインで完結できず、地域によっては遠出を強いられる可能性があると感じました。

リスクを差し引いても、無理のない掛金を設定し、受取時も損の無いように立ち回ることができればとてもお得な制度だと肌で実感しました。

読者様のご参考になれば幸いです。

ありがとうございました。以上です。